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仙台高等裁判所 平成4年(ラ)64号 決定 1992年5月27日

抗告人

佐々木一重

右代理人弁護士

織田信夫

相手方

菅原正幸

主文

一  原決定を取り消す。

二  本件を仙台地方裁判所古川支部に差し戻す。

理由

一抗告人の抗告の趣旨及び理由は別紙即時抗告状写し記載のとおりである。

二一件記録によると、原裁判所は、抗告人の本件仮処分命令申請に対し、平成四年四月二〇日、二〇〇万円を同月二七日までに担保供託せよとの保証金供託決定をなし(同日告知)、これに対して抗告人は、同月二七日に抗告をしたが、右抗告に対する抗告審の判断がなされないうちに、同月三〇日に右供託期間内に保証金を供託しなかったことを理由として原決定をなしたことが認められる。

ところで、保全命令申立における立保証額の決定は、その金額により債権者の資力によっては、債権者の権利行使を許すか許さないかを決する重大の結果をもたらすものであるから、債権者からの不服申立が許されるものであり、保全命令の申立てを却下する裁判に対する不服申立が即時抗告とされていること、民事保全法七条、民訴法一一一条の規定からすると立保証額の決定に対する不服申立は即時抗告であると解するのが相当である。すると、民訴法四一八条により効力(期間の進行を含む)が停止されるのであるから、右即時抗告に対する抗告審の判断がなされないうちに、立保証額の決定に定める期間内に供託しないことを理由としては本件仮処分命令申請を却下することはできないというべきであり、この点で原決定には違法があり取消を免れない。

三よって、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官豊島利夫 裁判官田口裕三 裁判官菅原崇)

別紙仮処分命令申立の却下決定に対する即時抗告状

原決定の表示

主文

本件申立てを却下する。

申立て費用は債権者の負担とする。

抗告の趣旨

一、原決定を取り消しさらに相当の裁判を求める。

抗告の理由

原審は平成四年四月三〇日本件仮処分申請につき、その供託金を四月二七日の供託期限までに供託しなかったから却下するとの決定をし、右決定は五月二日債権者に送達されたが、債権者は右供託金額が不当に高額であるのでその納付命令の取消しを求めるため四月二七日即時抗告をしており、納付命令は民訴法四一八条により執行が停止されているものであって、右却下決定は違法であり取消しを免れない。

よって抗告の趣旨記載の裁判を求める。

添付書類

一、訴訟委任状一通

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